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釜ヶ崎をひとつの大きな宿泊施設に見立てる

2016年07月31日

街路をホテルの廊下とみなし、街に点在する商店や施設を簡易宿泊所のアメニティと捉え、この街独自の宿泊形態を助長し、アメニティ施設がより活発に利用されるような提案を行う。そこで“エントランス施設”の新設を提案する。エントランス施設とは旅行者が釜ヶ崎に来て初めに訪れる施設で鍵の受け渡しやインフォメーションセンターなどの機能を持ったものであり、この街の新たなネットワークの拠点となる。客室はエントランス施設とは別の場所に存在する。観光客はここを始点にして客室まで向かうため、その動線がアメニティ施設の前を通り、かつ犬走りが四方八方に伸びている場所を7か所敷地として選んだ。特に東側の6か所のエントランス施設はそれぞれが犬走りを介して連携している。また、エントランス施設や犬走りの中に塀を埋め込むことでエントランス施設に街で行われているアクティビティを取り込む。塀にはキッチンを併設し、エントランス施設の内部にはダイニングスペースを設けた。これらは街のリビングとして機能するので誰でも利用することができる。鍵の受け渡しなどは二階で行う。一階部分は柱と、柱の中心線からオフセットさせた塀だけで構成して抜けの多い作りにし、二階部分は吹き抜けにしつつ壁で完全に覆うことで上部に囲みの空間を作り、内部に入って来易いが居心地はよい空間となるよう設計した。人々はここから犬走りへ導かれ街に拡散していく。


釜ヶ崎では塀の周辺に人が集まる光景がよく見られ、路上を使った様々なアクティビティが点在する。そこで釜ヶ崎全域を歩き、塀の場所と高さを記録し、塀のパタンを調査した。大きく分けて塀には1.フェンス、2.フェンス+ブロック、3.柵+ブロック、4.柵、5.鉄板+ブロック、6.ブロック+有刺鉄線の6種類のパタンがあった。1のフェンスは、フックを使用することによる物干し竿や布団干しの代わりとなっていた。2と3の低層のブロックと他のマテリアルが組み合わされるパタンでは、ベンチの代わりとして腰掛ける人々がみられた。4、5、6では、塀そのものに接触するアクティビティは見かけられなかった。更にそれらの塀の配置の種類として、a.アメニティ施設の溢れだしを受け止める塀、b.対面する塀、c.塀際のテクスチャ、d.塀に備えられる家具、e.塀と柵の囲い込みの5種類のパタンが見られた。釜ヶ崎にはこれらの多様な塀が存在しているが、それらの塀のまわりには塀の種類に関係なく日雇い労働者たちが集い、話をしたり食事をしたりするといった活動が日常的に行われていたる。

犬走り
釜ヶ崎では人が通れる幅を持つ建物間の隙間がいたるところに存在する。ここでは敷地境界線と建物の外壁の間にできた隙間を“犬走り”と総称する。これらの犬走りを調査し地図上にプロットし、通り抜けられるルートを探した。通常、犬走りは私有のもので自由に通り抜けることができないが、通り抜けられるようにすれば釜ヶ崎のファサード面は現在の約1.7倍になり、塀や路地で行われている活動がさらに活性化する可能性がある。また、宿泊所を出てからの経路の選択肢が増えることがわかる。

釜ヶ崎の簡易宿泊所と周辺アメニティに関する調査

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