琵琶湖周囲における土地利用形態の断面系列による考察
2015年02月03日琵琶湖を地形コンテクストとして捉え、琵琶湖周囲の地形と土地利用形態の関係性を読解する事を通して、水辺空間のもつ影響力を明確にし、琵琶湖周囲の現在の景観がどのようにつくられているかを考察する。湖と山脈に囲まれた琵琶湖周囲の土地の風景を作り出しているのは地形であり、特に水際線から垂直な方向への地形断面であると考えられる。そこで琵琶湖の水際線から山の尾根まで線を引き、各線が交わらないように配置する。配置した計百九十本の線に対して、線を断面線とした地形断面と、その線上の土地利用形態についてそれぞれ類型化を行った。類型化の結果、琵琶湖周囲の地形断面は7種類に分類できた。それにより、琵琶湖周囲の湖岸から山の尾根までの地形の成り立ちを明らかにした。また、断面類型のアラインメントから、琵琶湖周囲の地形は7つに類型したパタンのうち2つから3つのパタンの組み合わせで変化しており、数個のパタンが交互に並ぶ地形をブロックとして捉えると、長いブロックと短いブロックがほぼ交互に連なることで、琵琶湖湖岸から山方への景観はリズムよく変化している事がわかる。
地形と土地利用の関係を考察すると、平野部が少ない場合、湖岸に建築群が集積する事が多い。平野部が広い場合では、平野部は田園として利用されるため、 散村形態の土地利用が多く、湖岸への意識は薄いが、山が高い場合、山麓よりも山側に集落が存在する地域が存在する。また、平野部が少なく山が高い場合と、平野部が広く山が低い場合は類似した土地利用をされていることから、平野部が広い場合でも後背の山が低ければ建物は湖岸に集積する事がわかる。これらのことから琵琶湖周囲の土地利用において、その場所の地形にあったかたちで湖岸への意識が根づいていると言える。
2014年度修士修了生 豆野瑞穂